9月23日は勤労感謝の日と間違えがちですが、実は秋分の日です。
でも筆者にとっては“旦那様の日”でもあります。
旦那様。つまり、好江の連れ合い奥田寛の命日です。もう二十三回忌になります。
そこで今回は、好江夫妻のおはなしを・・・
子供がいなかったせいもあるのでしょうか、ずっと恋人どうしの様でしたよ。
でも結婚するまでには大変だったそうです。
奥田家は由緒正しいお家柄だそうで、親の代から芸人をしている、ましてや年上の女を嫁に迎えるなどとんでもないっ!!とお義母さんが大反対!
どうやってお袋を説得しよう・・・悩んだ旦那様は大学時代の恩師に相談しました。
娶りたい女性が芸人である事、家庭の事情で九つから学校に行っていない事、母がその事を嫌っている。どうしたらいいか・・・すると恩師が仰いました。
「奥田君、教育と教養とを混同しちゃいけない。大事なのは教育よりも教養なんだよ。確かに教育というものは学校でしか身に付けられないものだけど、そんなのは長い人生のほんの一時、通過点でしかないんだ。対して教養というものは当人さえ望めば生涯身に付けられる。彼女が教育を受けられなかったのなら、君が一生懸けて教養を身に付けてあげなさい。その価値がある女性なんだろ?」
・・・いやぁさすが大学の先生は仰る事が違いますね!我々など及びもつきません。
恩師の言葉をお義母さんに伝えたところ、渋々ながら首を縦に振ってくださったそうです。
恋人どうしのよう、と言っても人前でいちゃいちゃするような事はもちろんしません。旦那様は絵に描いたような亭主関白。
ある日、いつものように好江宅の居間で小言独演会が始まりました。ところがこの日はかなりの長講。筆者も小言を頂きながら「今日、長いな~」と思っていると旦那様、
「いいかげんにしろ!お前ちょっとしつこいぞ!」
やった~!!旦那様の天の声だっ!!
しかし相手は内海好江。この程度では退き下がりません。
「あぁたは黙っててください!これはあたしの弟子ですから。」
こんな事を言われたら九州男児の奥田寛は黙っていません。
「なにっ!!ゆたかがお前の弟子ならここは俺の家だっ!!
これ以上やるなら表へ出て道路の真ん中でやれっ!!!」
これにはさすがに内海好江も、
「・・・もう帰りなさい。帰る前に旦那様にちゃんとお礼言いなさいよ。」
旦那様にお礼を申し上げると、好江に見えないようにお道化た表情で舌をベ~ッと。
泊まりの仕事へ行くと好江は必ずほぼ毎晩、自宅へ電話します。酔っ払って。
「もしも~し寛く~ん?キミの愛する好江ちゃんだよ~。今ホテルの部屋で若い男と二人でいるんだ。一応夫であるキミに仁義を切らせるから。」
筆者に渡される受話器。「夜分遅くに申し訳ありません・・・」
「すまんな~酔っ払いの世話させて。その辺の物でぶん殴って早く寝かせちまえ。」
「はい、そうします。」 受話器を返すと好江、「愛してるよ~寛く~ん!おやすみ~!」 ・・・これ毎晩やるんです。めんどくさ。
旦那様は造園業の会社を経営していました。朝は普通に出勤しますから、好江も世間の奥様同様、食事の支度をして送り出していましたが夜は旦那様がお休みになってから帰宅する、なんて事もしばしば・・・
そういえばこんな事がありました。「昨日しくじっちゃったわよ~」
聞いてみますと事の発端は数日前。
仕事終わりに呑みに行って帰宅、入浴を済ませベッドに入った頃には深夜1時を過ぎていました。旦那様が目を覚まし、
「ん?今帰ったのか。」
「はい。遅くなりました。」
「今何時だ?」
1時過ぎだとはとても言えず、
「12時回ったとこ。」
「そうか。早く寝ろ。」
この時、好江の中の悪魔が囁きました。お?これ遣えるね~
数日後、この日はベッドに入ったのが2時近く。旦那様が目を覚まして
「ん?今帰ったのか。」
「はい。」
「今何時だ?」
「もうじき1時。」
「そうか。早く寝ろ。」
いいね~これ!!
そして件の日の前夜、同じ状況。但し時間は午前3時。
「ん?今帰ったのか。」
「そう。」
「今何時だ?」
「2時よ。」
「バカッ!俺は2時半に寝たんだっ!!」
つまらん嘘を吐くな、と叱られたそうです。
筆者が知る中で唯一、内海好江を叱る事ができる人。
それが・・・ 奥田寛という人。
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